かわら版Media
再保険カンファレンス
カンファレンス
2022年9月以降再保険カンファレンスがいくつか開かれています。
3年ぶりに対面での開催となりましたが、取り上げられる話題は良い材料は皆無といった状況でした。ハードマーケットが続くと伝えられていますが、会場内で話を聞いていくと、考えていたよりも深刻な状況ではないかと認識させられました。
再保険会社、格付け会社は再保険料上昇の予測を出しています。
ドイツの大手再保険会社2社はともに予想値を10%以上の可能性があると発表しています。
S&Pは5〜9%との可能性を示唆しています。
カンファレンスで取り上げられたトピックのいくつかをご紹介いたします。
損害状況
再保険市場のハード化の理由として挙げられる損害は主に3つあります。
まず一つはロシアのウクライナ侵攻に伴う損害で、支払われる保険金額が巨額ですので影響は避けられません。
もう一つは感染症に関する保険金支払いで、感染者急増により、金融庁から生命保険協会への要請で支払い手続きの簡便化、みなし入院に対しての保険金の扱いの指導があり、各社速やかな対応をとりました。しかしながら、再保険契約を行っている場合、再保険金の回収条件は通常の保険金支払い手順を念頭に設定されているため、再保険回収の際に議論が必要となるケースが出てくると再保険会社側は指摘しています。
最後は地球温暖化に伴う甚大な自然災害です。フロリダ、サウスカロライナを襲ったハリケーン「イアン」の損害は、2005年に最大の被害額(1600億ドル)を出したカトリーナに次ぐ被害になるだろうと言われています。想定される被害額は280億ドル(約4兆円)から最大では1000億ドル(約14兆5000億円)を超えるとも言われています。
アメリカの再保険更改は1月1日ですので、このイアンの影響が特に財物保険の更改条件に与える影響は甚大であると予想され、日本の保険会社はその影響度を注視し4月の更改に向けて準備するようです。
SDGs
ここ数年必ずと言っていいほど取り上げられるトピックは持続可能な開発目標(SDGs)です。
保険は17の目標の中で、いくつもの分野で貢献できると期待されています。一方で気候変動への具体的な対策は、自然災害の影響を如何に抑えることができるかが重要な要素であると言えます。
資金運用の面でも影響が出てきています。資金調達、運用でグリーンプロジェクトやソーシャルプロジェクトの初期投資又はリファイナンスのみに充当されるサステナビリティボンドが世界で急速に拡大しています。
インフレの影響
インフレ抑制の為の金融政策、金利上昇が、再保険市場のキャパシティにも影響をもたらしています。
これまで世界的な低金利状態が続き、国債など金融商品への投資の妙味がなかったために、オルタナティブ投資の対象として再保険市場が注目されていました。ILS(Insurance Linked Securities 保険リンク証券)と呼ばれる投資種目で、日本で有名なキャットボンドもこのILSの一つです。
再保険市場の中でILSの占める割合は低金利下で上昇し、最近では15〜16%を占めるほどになりました。ところが世界的にインフレ傾向が顕著になり、金利が上昇したため、リスクの高いILSではなく、確実なリターンが期待できる債券市場に投資資金が充てられる傾向が高まります。それに伴って再保険市場のキャパシティの減少を招いています。
2022年11月 記
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