かわら版Media
ウクライナ侵攻による保険損害
保険業界
日本の再保険契約の更改は、2021年度は大規模な自然災害がなかったため、全般的には前年よりも穏やかな更改交渉でした。
しかしながら、ロシア、ベラルーシへの制裁、また戦争にかかわる保険分野では様々な条件の見直しなどを再保険者が提案してきています。
ロシア、ウクライナの問題が保険市場にどのような影響をもたらすのか、影響が出ている保険種目に絞りご説明します。
ロシアの保険料規模
ロシアの保険料規模は、2017年の保険料を米ドル換算にした数字が162億ドルで、日本の保険料規模の約2%に満たず、ロシア内の保険料規模は非常に小さいと言えます。
ロイズではウクライナ、ロシア、ベラルーシの引き受けは保険料に換算して世界中の引き受けの1%に満たないとし、影響は限定的だとコメントしています。
想定される保険損害
S&Pグローバル社は、2022年3月31日にロシア、ウクライナ紛争に関連した保険損失額が160~350億ドルに達する可能性があると発表しています。
航空保険
損害額が甚大になる恐れが出ているのが、ロシア内にある外国所有の「貸し出されている」航空機です。ロシアが接収したこれら航空機の残存価格を、各格付け会社は110億~130億ドルにもなると試算しています。
船舶保険
ロシアによるウクライナ侵攻においては、3月にウクライナが海岸線を有する黒海、アゾフ海が、4月20日からはロシア周辺海域すべてが「除外水域」に指定されました。
軍事的緊張地域など補償されない水域を除外水域として割高な保険料が適用されます。
貿易保険
政府の全額出資による株式会社日本貿易保険が、戦争、内乱、外貨送金停止などの非常時のリスク、相手方の信用リスクなど民間保険会社での対応が難しい案件についても保険提供を行ってきています。
報道によると、ウクライナに自動車部品を輸出した日本企業に、ロシアの侵攻開始から初めて、輸出代金のほぼ全額にあたる約2,700万円が保険金として支払われたようです。
日本貿易保険が設置した相談窓口には、ウクライナ、ロシアの両国と取引のある企業から200件以上の問い合わせが来ているとのことで、侵攻の長期化で日本企業への保険支払いは今後も続くと予想されています。
2022年4月 記
貴社の課題をジャパン・リスク・スペシャリストにまずご相談ください。
当社の経験にもとづいた貴社にベストのご提案をいたします。
それぞれの会社、団体の課題は様々です。貴社の状況を伺い、ターゲットを確認させていただき、問題解決に向けて対応策をご提案します。当社が手がけているいくつものサービスメニュー、豊富な実績をもとに貴社にベストの方策をご提示し、実装いたします。
関連記事
-
- 2021.05.28
新型コロナウイルス感染症(COVID-19)による保険業界への影響
新型コロナウイルス感染症は2019年末、中国の武漢市で検知され、その後、瞬く間に世界中に広まり、WHOは2020年3月11日にパンデミックを宣言しました。 再保...
-
- 2022.09.27
インデックス保険
事故、損害が起きた際に、その損害をてん補する契約が保険契約であるとされていますが、地震や台風などの発生自体がトリガーとなる契約も出てきています。事前に支払いの条...
-
- 2021.06.29
保険業とデジタルテクノロジー
デジタル庁が新設され、国を挙げてデジタル化推進の動きが高まっていますが、世界のデジタル化競争力ランキングでは日本は27位と低評価で、特に企業の俊敏性が劣るとされ...
最新記事
-
- 2024.10.11
アジアキャプティブカンファレンス2024リポート
9月19日にマレーシア、クアラルンプールでアジアキャプティブカンファレンスが開催されました。 今年で7回目を迎えるこのイベントはマレーシア, ラブアン...
-
- 2024.06.26
ラブアンのご紹介
アジアのキャプティブドミサイルの一つであるマレーシア、ラブアンの存在は次第に知られるようになりました。 弊社は2012年からラブアンでのキャプティブ設立、運用支...
-
- 2024.06.06
創業パートナーであり長年の友人であるアンドリュー・レズリーへの敬意を表して
*この追悼文はAsia Affinity Holding’sの公式ウェブサイトから共有されています。 昨年12月にアンドリューが突然亡くなったことにより、50年...