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かわら版Media

表明保証保険のメリットと注意点

2023.07.28

企業保険

M&Aが普及してきている昨今、「表明保証保険」が注目を浴びていることをご存じでしょうか?
表明保証保険は1990年代に登場した保険です。

日本では2020年12月より国内企業同士(中小企業)のM&A取引を対象とした表明保証保険が発売されたことにより、注目されるようになりました。

表明保証保険はまだ歴史が浅いため、どのような保険なのか広く認知されていないのが現状です。 本記事では以下について解説しますので、業務にお役立てください。

この記事でわかること

  • 表明保証保険の概要
  • メリット
  • 注意点
表明保証保険のメリットと注意点

表明保証保険とは

表明保証保険は、売主の表明保証違反によって、買主が被る損害を保険会社が保険金として補償するものです。
売主用と買主用の2種類があります。 表明保証保険の活用で、より円滑なM&Aが実現できます。

表明保証保険の概要

前述の通り、表明保証保険には売主用と買主用のそれぞれを対象にしたものがあります。
売主用表明保証保険と買主用表明保証保険には、以下のような違いがあります。

買主用表明保証保険

買主用表明保証保険は売主の表明保証条項違反で被った経済的損失を補填する内容です。
売主に違反があった場合、売主ではなく保険会社から補償金を支払ってもらうことができます。

売主用表明保証保険

売主用表明保証保険は、買主から保険対象となる表明保証違反について損害賠償請求された際に補填する内容です。
未加入の場合、売主は買主に対して補償金を支払う必要があります。

表明保証保険に加入している場合は、買主に対する補償金は保険金でまかなわれます。
但し、売主用表明保証保険を提供する保険会社は限られています。

実務では、売主用より買主用が利用されるケースが圧倒的に多いです。

表明保証条項にかかわる補償額は、買収額の10~20%程度にするケースが多いようです。
保険料は補償額の1〜4.5%程度となります。
契約手続きは全てを完了させるまでに3〜4週間程度かかり、長ければ1ヵ月以上かかることもあります。

表明保証とは

表明保証とは、売主が買主に対し最終契約の締結日や譲渡日等の一定の時点において、売主自身や買収対象会社における財務や法務等に関する一定の事項が真実かつ正確であることを表明し、その内容を保証するものです。

「契約前に確認した財務・法務・税務などに関する事実が正確なことを保証すること」です。
主にM&Aに使われる事項で、最終的な契約を結ぶ際に必ず契約書に盛り込まれます。

M&Aを実行するプロセスには、買収の対象となる会社の財務・法務・税務などのリスクを洗い出し、精査する作業(デューデリジェンス)があります。

デューデリジェンスは短期間で行うため、すべての問題点を把握しきれない可能性があります。
そのため表明保証という事項を契約書に設け、確認した事実が間違いないことを保証することが必要です。

表明保証の内容と重要性

表明保証の内容については、一般的に買収契約書の中における表明保証条項に記載されることになります。
買主側は調査しきれなかったリスクを軽減させるために、多くの条項を挙げようとします。
一方、売主側は損害賠償請求される可能性をできる限り低くするために条項を減らしたり、修正を求めたりすることが多いです。
このように、買主側と売主側の両社の交渉と調整によって表明保証の内容が決定されます。

表明保証では、具体的に以下の内容が示されます。

  • 実施した事前調査(デューデリジェンス)で開示された情報に相違がない
  • 財務や会計に対する情報が正確
  • 買主の会社に開示した情報以外に偶発債務がない
  • 公表していない訴訟や提訴がない

上記はあくまでも一例であり、契約の内容や案件の性質によって変化します。

さらに、表明保証の内容によっては違反の発覚が遅くなる場合があるため、効力が及ぶ期間を記載するのが一般的です。効力の及ぶ期間は、契約によって異なります。

表明保証保険のメリット

表明保証保険は、買主と売主の双方にメリットがあります。
以下では、買主と売主それぞれの視点で表明保証保険に加入するメリットを解説します。

買主側のメリット

買主側から見た表明保証保険のメリットは、以下の3点です。

  1. M&Aをスムーズに進められる
  2. M&A実施後のリスクと補償請求の時間や労力を軽減できる
  3. 売主に十分な資力がない場合に備える

詳しく解説していきます。

1. M&Aをスムーズに進められる
表明保証保険に加入しているとM&Aの交渉の際、「表明保証保険に加入しているので、仮に保険対象となる表明保証条項に対する違反に該当しても、売主に対しては損害賠償を請求しません」と売主に言えます。
その結果、特にオークションの場合、M&Aの交渉を優位かつスムーズに進められる可能性があります。

また、売主との交渉をスムーズに進めるためや売主が損害賠償する上限額と買主が希望する補償額の乖離を埋めるためにも、表明保証保険に加入するのは有効な手段と言えるでしょう。

2. M&A実施後のリスクと補償請求の時間や労力を軽減できる
表明保証保険に加入することで、M&A実施後に表明保証違反によって損害を負ったとしても保険金でカバーできます。

表明保証違反が発覚した際、補償の請求に時間や労力がかからなくなるのも、買主側が表明保証保険に加入するメリットです。

売主に対して賠償を請求し金銭を回収するためには、時間や労力がかかります。
表明保証保険に加入していれば、表明保証の違反が発覚した際に保険金で損害を補填できるため、時間や手間をかけて売主へ損害賠償を請求する必要はありません。

また、M&Aでは売主がM&A後に対象会社の経営に引き続き参加したり、株主として残留したりすることがあります。
このとき、表明保証保険に加入して売主に損害賠償を請求しないようにすることで、売主との良好な関係性も維持しやすくなるでしょう。

3. 売主に十分な資力がない場合に備える
表明保証違反があった場合、買主が損害賠償請求を行ったとしても売主に支払い能力がない可能性も考えられ、買主が表明保証違反に基づく補償請求をしたところで、全く意味がありません。

表明保証保険の活用で買主が売主の信用リスクを負担するのではなく、高い信用力の保険会社にリスクを負担してもらえます。
また、補償金が速やかに支払われるため、リスクを軽減できます。

売主側のメリット

売主側から見た表明保証保険のメリットは、「クリーンイグジットが実現しやすくなること」です。

クリーンイグジットとは、M&Aによる会社又は事業の売却に関して売主が買主又は第三者から将来的に賠償請求を受けるリスクを排除したうえで、売却を実行し当該会社又は事業から完全に撤退することです。

クリーンイグジットの実現により、将来の表明保証違反による損害賠償リスクを保険会社へ転嫁できます。
また、売却によって得たキャッシュを負債の返済に充てたり、投資家に分配したりしやすくなります。

保険料はM&A支援制度の補助金を利用

表明保証保険も保険であるため、補償を受けるためには保険料が発生します。支払い保険料はコストです。
補償の範囲を広げれば保険料も上がってしまいます。

表明保証保険の保険料については、中小企業庁の『事業承継・引継ぎ補助金』でまかなえる可能性があります。

事業承継・引継ぎ補助金とは、小規模・中小企業のM&Aを支援するための制度です。
『経営革新型』と『専門家活用型』の2種類から構成されており、専門家活用型の補助対象経費に保険料が含まれています。

表明保証保険に加入する際は保険会社の引受審査にかかる費用が発生し、保険料以外のコストも負担する場合もあります。

M&A支援制度の補助金額には補助対象経費の1/2以内と上限額がありますが、資金に限りがある中小企業にとっては大きな助けとなるのではないでしょうか。

参考:中小企業庁|中小 M&A 推進計画

表明保証保険に加入する際の注意点

表明保証保険に加入する際の注意点として「免責事由」があります。
免責事由に該当した場合、表明保証違反があっても補償の対象外となる点に注意しなければなりません。

免責事由

一般的に規定されることの多い免責事由は、以下のとおりです。

  • 保険契約締結時に既知の損失要因(保険契約者/被保険者が認識していたもの)
  • デューデリジェンスが不十分
  • 予測、計画または将来事項についての表明保証違反 
  • 贈収賄、反社会勢力関係等との取引に係る表明保証違反
  • 確定給付型の年金・退職金等従業員福利厚生制度の積立不足

表明保証保険の加入を検討する際は、補償の範囲を必ず確認しましょう。

​​表明保証保険で円滑なM&Aが実現可能に

2022年の一年間に日本企業が関連したM&Aの件数は、前年比1%増の4,304件と過去最多となりました※。

2022年の一年間に日本企業が関連したM&Aの件数は4,304件と過去最多

画像出典:日経新聞

近年は中小企業の事業承継でM&Aが増加傾向にあります。これに伴い、中小企業や小規模企業向けの表明保証保険を扱う保険会社も増えています。

表明保証保険は損失の補填に使えるだけでなく、M&A自体を有利に進展させるうえでも有効です。
表明保証保険に加入することで円滑なM&Aが実現可能になり、成功率も高まる可能性があります。

加入の際は、取引規模や保険料、免責事項などをよく確認をしましょう。

表明保証保険への加入をご検討の際は、ぜひ弊社にお問い合わせください

※参考:日経新聞|日本企業のM&A、22年最多4304件 投資会社が存在感(2023年1月3日)

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