かわら版Media
2023年 再保険契約更改状況
再保険
欧米を中心に1月1日に再保険契約更改が行われました。
昨年は何度も再保険市場のハード化をお伝えしてきましたが、実際の更改の結果を海外からの情報をもとにお伝えします。
更改結果
保険種目、事故状況により結果は異なりますが、総じて厳しい結果であったようです。
アメリカ、韓国では甚大な事故があり、特に超過型の値段は倍になった契約もあるようです。
再保険回収がなかった契約でさえも値段は上げられています。変動が比較的穏やかな比例再保険でさえもどの地域でも5%程度、手数料水準が下げられています。
条件だけでなく、キャパシティの縮小により更改できなかった契約もあったとのことです。
30年近く再保険に携わっている者も「今までで最も困難な更改だった」と話しています。
金利上昇の影響
各国で政策金利の引き上げが昨年から始まっています。
再保険市場には金融市場の投資先の一つとして資金が集まり、その投資資金は再保険キャパシティ提供という形で再保険市場に貢献してきました。しかしながら2021年度に420億ドルの資金が2022年には350億ドルと17%程度も少なくなる見込みです。
2008年のリーマンショックの時にも前年に比較して2割程度の資金減少がみられました。それ以来約15年増加を続けていましたが、投資家が資金の一部を引き上げています。金利が上昇しているためにリスクのない投資先に資金が流れるからです。
資本の減少と保険リスクや予定利率リスクの上昇は保険会社のソルベンシーマージン比率を引き下げます。この数字も2008年リーマンショックの起きた年の水準まで落ち込むと予想されています。再保険会社は収益性をより重視した運営が求められます。
比例再保険引き受けの際、再保険会社各社が目標にしているマージン率(再保険手数料率と実際の損害率の差異)も引き上げられており、その結果が先ほどの比例再保険の更改結果として報告されています。
インフレ率
インフレによる支払保険金の増額が懸念され再保険料率の算出に影響しています。
日本におけるインフレのピークはこれからとなり、しばらくは上昇基調が続くと考えられますので、引き続き支払い保険金の額に注意を払う必要がありそうです。
再々保険
1月1日の更改では、甚大な被害をもたらしたハリケーンイアンの影響をうけて風水災の超過型再々保険契約は平均で50%、契約によってはほぼ倍の料率に引き上げられたと言われています。
過去、甚大な保険災害の後には新たなキャパシティ提供がありました。特に再々保険市場ではその動きが顕著なのですが、ハリケーンイアンの後には新たなキャパシティ提供の動きはなく、料率高騰だけでなくキャパシティ不足も見られています。
また再々保険料率の高騰は財物保険種目だけでなく、ロシアのウクライナ侵攻の影響で航空保険分野及びポリティカルリスク保険分野などにおいても顕著でした。上昇幅は5割以上だったと言われています。
対策はあるのか
このハードマーケット下で少しでも希望する条件を獲得するための策は、いかに再保険市場に出す「リスク」を軽減させるかということです。
具体的には
- 元受条件の見直し: 保険料アップや免責金額の引き上げ など
- 再保険条件の見直し: イベントリミットの見直し、保有額の引き上げ など
が考えられます。
再保険キャパシティが減っていると言われている状況下では自社のポートフォリオが抱える潜在的なリスク量を精査し、再保険金支払いのリミットを設定することで、希望する条件に近づけることが可能になるケースは少なくないようです。
対策は一様ではありません。更改の準備の際、また交渉中に適宜ご提案させていただきます。困難な状況下ではありますが、ともに乗り越えていけたらと思います。
2023年1月 記
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