かわら版Media
保険市場におけるインフレの影響
保険業界
物価上昇の報道が増えてきています。インフレは保険市場にも影響があると思われます。
どのような影響が想定されるかご説明いたします。
物価上昇の背景
今回の物価上昇はいくつかの要因が重なっていると思われます。
まず世界的に継続してとられた金融緩和政策による金余り現象です。低金利の状態が長く続き、株価上昇をもたらし、再保険市場にも高いリターンを求める資金が入ってきたと伝えられています。
次に感染症の影響です。行動制限、渡航制限により物流が停滞し、人手の確保が難しい状況が続いています。通常業務が継続できず非正規労働者の契約を解除した企業が復職を求めても人員が確保できないといった問題などは顕著な例です。
さらにロシアによるウクライナ侵攻です。ロシアからの輸入に頼っていた、原油、ガスなどの供給量が落ち込み資源価格が上昇しています。また欧州の穀物庫と呼ばれたウクライナからの小麦などの輸出が落ち込み、価格上昇のみならず食糧不足が懸念される事態にまで及んでいます。
生命保険
生命保険、損害保険で影響を受けるポイントが異なります。
生命保険は契約した保険の価値が目減りすることが懸念されます。特に終身保険で長期の契約で保険金額が決まっている場合、インフレ状態が続いていくと解約返戻金を含めて将来受け取る保険金の価値が目減りします。
保険会社にとっては集めた資金の運用先利回りの変化という形での影響が考えられます。
損害保険
保険金事故の査定金額がインフレの影響で増加する恐れがある、これが損害保険契約上の課題です。既に再保険会社からも再保険更改時の物価高騰による再保険条件への影響を懸念するコメントを出しています。
再保険更改は引受け年度ごとの成績を精査し条件を交渉していきます。家財保険の保険期間は2年が中心ですので、ある引受け年度の支払いが完了するまで5年ほどかかります。
その期間インフレが進むと想定すると、2023年の時点で条件を確定するためには、期間中の資材、人件費の値上がりを考えて条件提示が行われることが推測できます。
再保険市場がハード化している中、さらなる課題として取り上げられてくると思いますので、対応を考えておく必要があるのではないでしょうか。
2022年8月 記
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